教育課程は展開がどう変わったか?
3年空気と水を調べよう(4年版)→4年とじこめた空気と水(14年版) 名古屋市小学校教育課程より
写真は[たのしい理科]大日本図書から転載
2003.10.18  旭出小学校 伊藤亮吉
  3年空気と水を調べよう【4年版】
(9時間)
 4年とじこめた空気と水【14年版】
(6時間+1)
 
1 空気の見つけ方 (5)
 ○ 袋にとじこめた空気
 
1 とじこめた空気   (3)
 ○ 袋にとじこめた空気

3年も4年もほぼ同内容
 
 ○ 袋の中の空気


 ○ コップの中の空気


 
3年では
・空気は場所を占める。
・空気は水の中では泡になる。
・空気は水と置き換わる。
ということがかなり丁寧に学習するようになって います。
 この学習は,生活科以前では2年生の内容でし た。ところが4年ではこうした内容が無くなり, 突然閉じこめた空気の性質が出てきます。
「こんな事は4年生では経験上の常識」と思って いるのでしょうか。そうだとすれば小学校の学習 内容は何の意味もないことになります。
 そこで,本当にこの内容を4年生 の児童が知 っているか,または,推論することができるかを 過去に学習前の2年生で調べた問題で確かめまし た。
 
  空気が入っているコップに○をつけなさい。
 
 


 「空気はどこにある?」と質問すると「どこで もある」と答えるにも関わらず,正しく答えた子 は,なんと!20%にも満たない。(学習後のテス トです。他のクラスの先生からも指摘があった)
 これは,学習前の2年生と変わらないレベルと いえます。小学生にとって目に見えない物質が存 在しているという概念は,丁寧に学習する必要が あるのです。
 驚いたのは,ふつうにたっているコップでさ え,半数以上が「空気がない」と考えていること です。2年生ではもう少し正解率が高かったよう に思います。つまり「空気は軽い」という知識が 頭にインプットされ,「上から逃げていく」と考 えるようになったのでしょう。
 また,スポンジに空気が含まれていることを調 べる方法を質問したところ,「水に入れてしぼる とアワがでる」(20%)「押すと風がでる」(8%) わずか28%しか正しく答えられません。回答でき ない児童が大部分でした。
 ちょうどこの解説スペースの分が4年の学習か らなくなった部分です。論理性を無視して,空気 でっぽうをもとにした「制作活動をすれば理解が 深まる」という考え方の弊害と考えられます。
 

 
○空気さがし,空気遊び
 










 
2 とじこめた空気  (2)
(2) ○ 筒の中の空気



○ 空気でっぽう作り
 
 ○ とじこめた空気3年も4年もほぼ同内容


 ○ 作ってみよう
3年も4年もほぼ同内容 
3 とじこめた水  (2)
 ○ 筒の中の水@

 ○ 水でっぽう作り@





 
2 とじこめた水 (3)
3年も4年もほぼ同内容
 ○ とじこめた水@
 ○ まとめようA

(空気と水の性質の比較と2つの性質の違いを使った道具の仕組み)
 
わたしの時間      (1)
 このように,自ら考えをもつ,ことは強調されても,論理的に考えることは削除されていると言っていいでしょう。体験は重視されていますが,体験をを元に論理的に考える能力を養うことはなくなっています。
 しかし,本当に恐ろしいのは,理科の目標に「自然に親しみ,見通しをもって観察,実験などを行い,問題解決の能力と自然を愛する心情を育てるとともに自然の事物・現象についての理解を図り,科学的な見方や考え方を養う」とされているのに,それを解説した部分では「自然の事物・現象の性質や規則性,真理などの特性に対する考え方の転換である。自然の特性は,人間と無関係に自然の中に存在するのではなく,人間がそれを見通しとして発想し,観察,実験などにより検討し承認したものである。つまり,自然の特性は人間の創造の産物であるという考え方である。」とされていることです。こうなると,この指導要領は本当に理科教育に関わっている人が作成したのだろうか,と言う疑問さえ抱いてしまいます。
 自ら考えをもつ,という一見耳障りのよい言葉も裏を返せば,人間による自然への傲慢な態度とも言えましょう。こんな時代こそ,事実から仮説を立て,実験し,検証していくという子供の論理的思考を育てるために理科教育を実践していくことが求められているのではないでしょうか。
 

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